第22話 「海とヨットと女」 2003.Feb.1
海洋文学もさることながら、ヨットの出てくる映画は、わが国では稀だ。
外国では時々ヨットを軸にした物語、あるいはヨットが背景にある映画 とかサスペンスやラブロマンスが沢山ある。
最近BSとレンタルビデオで「リプリー」と言う映画を観た。
ずっとずっと昔、若かりしころ見たアランドロン主演の「太陽がいっ ぱい」と同じ小説の映画化だが、もとになる小説の題名が「リプリー」 だそうだ。
二つを比べてみると断然「太陽がいっぱい」の方が良い。
この映画は自分が若かりし頃、青春の焦燥感に苛まれていた頃見た映画だ。
あのバックに何度か流れる音楽は、地中海とヨットと女の情景と共に私のトラウマとなっている。
思い切って買ったDVDを時々思い出したように写して見ているが、今でも胸の内で何かが叫び声を上げ、興奮して血圧を上げる。
しかし、当時、あれだけのヨットと女と地中海と言う環境は背伸びし ても得がたい蜃気楼の如き夢でした。
後に堀江謙一さんをモデルにした石原裕次郎主演の「太平洋ひとりぼっち」は感動と共感を覚えた。
こちらのヨットは、ちょっと無理をすれば当時の自分でも手に入れられると言う夢に直結するヨットとして身近 に感じられた。 彼が太平洋横断に成功して、ゴールデンゲートブリッヂを潜るところとか、通りがかりの大型ヨットに挨拶するあたりは、自分の五感が震え
るような感動を覚え、その極みに達する好きなシーンである。
思い出が目を醒まし、感情移入が極みに達して、ジーンと来る。
胸にグググッと来て、鳥肌が立つ。
こんな感動、今の世には左程多く はない。
笑いは百薬の長、涙は心の浄化作用・・・と自分は思っている。
堀江さんが金門橋をまさに潜らんとする時、口から漏れるセリフが良い。
「かぁちゃん来たんやでぇ。」
眼(まなこ)がうるうるしてくる。
CMのチワワの比どころではない。
ましてや「鉄道屋(ぽっぽや)」くらいでは、泣けるものではない。
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